今回は、退職できない人がひっかかってしまっているバイアス5選を紹介していきます。
ここでいうバイアスとは、偏見や先入観といった意味です。
人間でしたら誰でも影響を受けているバイアス。
もちろん場合によっては、いい影響をうけることもありますが、マイナスに働いてしまっているケースも多いです。
「退職できない」という人がどのようなバイアスに影響を受けているのか、それでは見ていきましょう。
コミットメント効果、一貫性の法則
一度、思考や行動したことに矛盾しない行動をその後も行いやすいというバイアスです。
例:
友人同士の会話にて
A「明日暇?」
B「うん。暇だけど」
A「なら、映画見に行こうよ」
B「正直面倒だけど暇って言ってしまったからな(。。。良いよ)」
ってパターンよくありますよね。
一度暇といってしまったので、その後の誘いを断りにくくなってしまいます。
退職において:
1ヶ月ほど前に上司に退職について相談してみた。すぐに面談の場が設けられ、その話し合いでは、上司の意見に納得したので1年間は続けてみると決心した。
でもやっぱり今月いっぱいで退職したい。。。
一度辞めないと言ってしまった手前、退職することができない
あるあるですね。
また、退職を言い出すことができたとしても、社長や、上司から
「面談の時は1年間は続けるといったじゃないか?」
とか言われてしまう時も多いかと思います。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
「一度言ったことは守らないといけない」「嘘つきになってしまう」
こういう思い込みですよね。
確かに、言っていることがコロコロ変わるような、一貫性がない人は信頼できません。
信用の面以外でも、一貫性を保つことは普段生活する中では便利です。
例えば、ダイエットすることにコミットした場合、上手く一貫性を保つことができれば、美味しそうなチョコレート屋を通り過ぎた時でも無視することができます。おいしそうなチョコレートを見るたびに「やっぱりダイエットやーめた」なんて感じですと理想の身体を手に入れるのはインポッシブルです。
しかし、コミット、一貫性の法則が、あまりにも強く、どうでもいいようなことにまで働いてしまうと自分を苦しめるだけです。
打開策:
コミットメント、一貫性の法則を打ち破る策を二つご紹介します。
JOJOの岸辺露伴に学べ
「だが断る」
原作では「自分の事を強いと思っている奴にNOと断る事」としての「だが断る」という発言ですが。
このワードは一貫性を断ち切るときにも非常に強力です。
「社長すみません。来月末で仕事辞めたいのですが」
「タケシく〜ん。こないだの面談の時にもう1年間は仕事続けるって言ったよね?」
「確かに言いました。」
「自分で言ったことはちゃんと守ろうね。嘘つきになっちゃうよ。タケシくんも嘘つきになりたくないでしょ?」
「そうですね。確かに嘘をつくのは悪いことですね。」
「それに、来年になったら給料も少し上げてあげるって言ったでしょ?もう1年間だけ頑張ろうよ。」
「確かに給料を上げてもらえるのは非常にありがたいです。また、社長には普段も可愛がっていただいておりとても嬉しいです。」
「だが断る!」
小島よしおに学べ
小島よしおさんの代表ギャグ「そんなの関係ねぇ」
「社長すみません。来月末で仕事辞めたいのですが」
「タケシく〜ん。こないだの面談の時にもう1年間は仕事続けるって言ったよね?」
「確かに言いました。」
「自分で言ったことはちゃんと守ろうね。嘘つきになっちゃうよ。タケシくんも嘘つきになりたくないでしょ?」
「そうですね。確かに嘘をつくのは悪いことですね。」
「それに、来年になったら給料も少し上げてあげるって言ったでしょ?もう1年間だけ頑張ろうよ。」
「確かに給料を上げてもらえるのは非常にありがたいです。また、社長には普段も可愛がっていただいておりとても嬉しいです。」
「でもそんなの関係ねぇ」「でもそんなの関係ねぇ」
「はい、オッパッティー(Ocean Pacific Taishoku)」
現状維持バイアス
変化によって得られるリターンより、それによって失うもの(リスク)を過大に評価してしまうバイアスです。現状を維持しようとします。
例:スマホの通信料金
プランを見直したり、違う会社に変えた方が月々数千円ほど安くなるにも関わらず、ずっと同じプランのまま使い続けている。
退職において:
今の会社よりも、他の会社の方が明らかに良いのに。転職活動もせずに、今の会社でダラダラと仕事を続けてしまっている。
確かに環境の変化はストレスになりますし、先の見えない将来は不安ではあります。
また、転職活動を行うのは確かに面倒かもしれません。
しかし、そのストレスや不安を過剰に感じすぎてはいませんか?
対策:
現状を変えた場合と、変えない場合のメリット、デメリットを紙に書き出す。定量的に分析してみる。
頭のなかだけで考えるのではなくて、紙に具体的な給料や、休日日数などを具体的に書き出してみて現状と変化した場合を分析してみましょう。
続いて2つ一緒に紹介します。理由はこの二つのバイアスは組み合わさって発動することが非常に多いからです。
正常性バイアス
自分にとって悪い情報、害のある情報は無視したり過小評価してしまうことです。
簡単にいうと異常事態にも関わらず、正常だと思い込んでしまうことです。
多数派同調バイアス
行動に迷った時、とりあえず周囲の人に合わせようとする、みんなと同じにしておけば間違いないと考えてしまうことです。
赤信号みんなで渡れば怖くない理論です。
例:東日本大地震
先日10周年を迎えた東日本大震災。行方不明者、死亡者合わせて2万2200人にものぼりました。
行方不明者、死亡者の大多数は地震の揺れそのものよりも、その後の津波によるものと言われています。
東日本大地震では、場所にもよりますが、地震発生から30分程度で津波がきました。
みなさん30分あれば、近くの高台に避難することくらいはできると思いませんか?
もちろん、身体の不自由な方や、場所によっては高台がないという可能性もありますが。
それにしても、2万2200という数はあまりにも大きすぎるような気もいたします。
死人に口無しですが、これには『正常性バイアス、多数派同調バイアスが強く影響しているといわれております』
あの津波が迫りくる非常事態においても、「大丈夫だろ」「揺れがちょっといつもより大きいだけ」(正常性バイアス)、周りの人が必死こいて逃げていないような状況だと「あの人も避難しないから大丈夫なんだろう」(多数派同調バイアス)といった感じでゆったりと避難、もしくは『津波なんてこないだろう』という判断で高いところに逃げずに、そのまま津波に飲み込まれてしまった人も多いと言われております。
退職において:
ブラック企業において、周りもサービス残業しているから自分もサービス残業しなきゃ(多数派同調バイアス)、最近怒鳴られたり、暴力をふるわれることも多いけど怪我をする程度でもないし大丈夫だろう(正常性バイアス)といった感じで、外部からみれば明らかにヤバイ状況でもそれに気づくことができなくなります。
対策:社外の第三者に相談。
社内の人に相談ですと、その人自身も多数派同調バイアスにかかっている可能性が高いので社外の人に相談してみましょう。
コンコルド(サンクコスト)効果
時間や金銭的なコストをかけたものを、実際の価値より高く見積もってしまうバイアスです。簡単にいうと、お金や時間、労力を費やしたので、ここで止めるともったいないと思い、損切りができなくなってしまうバイアスです。
例:
・ギャンブル
すでに10万円も負けてるから、そろそろ出るはずだ。負けた分を取り返すぞ!
・恋愛
この彼女のために、お金も時間も労力も注ぎ込んできた。不満はたくさんあるが、今さら別れられない。
・食べ放題
食べ放題だ!「元をとらなきゃ!」と思い、ついつい食べすぎてしまった。苦しい。
退職において:
例えば、就活に苦労した人はこのバイアスにかかっていることが多いのではないでしょうか?
特にこのコロナ渦で、買い手市場の今
就活では落ちまくり、やっと決まった会社。
マジで感謝しかない!
なんて感じですと、バイアスMAXの可能性もあります。
仮にその会社がスーパーブラックだとしても、せっかく雇ってもらったんだからがんばらなきゃ!って気持ちになります。
また、長年勤めてきた会社で、「この会社には、オレの人生の全てを捧げてきた。」というタイプ。
確かに人生の全てを捧げられるほど素晴らしい会社というものも中には存在するということでしょう。しかし、転職が当たり前になってきた現代。自分の本心では他にもチャレンジしてみたいと思っていることがあるにも関わらず、このバイアスが足かせになっている可能性もあります。
対策:
過去の努力や、過去に費やしたコストは一旦忘れて、現状を0として考えましょう。
まとめ
今日紹介したバイアスは
- コミットメントと一貫性の法則:一度言ったことを守ろうとしすぎる
- 現状維持バイアス:現状を維持しようとしすぎる
- 正常性バイアス:正常だと思いすぎる
- 多数派同調バイアス:他の人に同調しすぎる
- コンコルド効果(サンクコスト効果):コストをかけたものが大事だと思いすぎる
です。
バイアスは影響の大きさの差はあれ、人間全員影響を受けていると言っても過言ではありません。
バイアスの悪影響をみてきた反面で、バイアスは必要不可欠、良い影響もあります。
コミットメントと一貫性の法則においては、言っていることがコロコロ変わる人は確かに信用できないですし、一貫して行動しなければダイエットや禁煙などもできないでしょう。
正常性バイアスがないと常にパニックになってしまうでしょうし、多数に同調することで得られるメリットもたくさんあります。
スマホについてよく分からなければとりあえずiPhone買っておけば、大失敗するということもないですし、使っている人が多いので分からないところがあれば尋ねるのも簡単です。
余談にはなりますが、
東日本大震災でも多数派同調バイアスがいい方向に働いたケースもありました。
『釜石の奇跡』
岩手県の沿岸部にある岩手県釜石市。東日本大震災では人口約4万人に対して、1000人を超える死者・行方不明者が出ました。
一方で、小中学生のほとんどでは無事でした。
釜石東中学校では、地震発生直後、大声で叫びながら指定の避難所に避難、またその後迫りくる津波の様子をみた生徒が避難所が危険だと先生に訴えさらに高台に避難しました。また、避難の途中それをみていた住民もつられて高台に避難しました。
これは正常性バイアスを打ち破ることにプラスして、
多数派同調バイアスに関しては、生徒の避難をみた住民がそれにつられて避難したという点においては、バイアスがいい方向に働きました。
しかし、必要がないときにバイアス発動していることも多いです。
バイアスから完全脱出するというのは困難ですが、人間にはもともとこういう傾向があると知るだけでも効果はあると言われております。
また、自分自身では気付きにくいこともありますので、他の人に相談してみるというのも一つの手段でしょう。
最後に参考にした書籍を紹介いたします。
他にも様々なバイアスが詳細に記載されてありますので、少しでも興味ある方は是非読んでみてください。